私の実母は約10年ほどとある小さな事業所でパート勤務をしていました。時給は20年前の当時750円程度と非常に安く、経営者夫婦は休憩室に冷暖房を設置しなかったり制服を実質自費で支払わせたりとかなりのケチで有名でした。その経営者夫妻には男1人女2人の計3人の子どもがいたのですが、跡継ぎになると思われていた長男が東京で就職を決めた上事業は継がないと宣言したのです。経営者夫婦は店の継続についてどうしようかと思っていたそうですが、幸いにも次女と結婚した婿が仕事を退職して跡継ぎになりたいと言ったということで、経営者夫婦は喜びました。そして経営者も60代半ばということで、ぼちぼち代替わりをしようと退職したばかりの婿に仕事を一から教えている状態でした。そんな時突然不幸が起きました。経営者が車で外出している時、急病になり亡くなったのです。まだ仕事を覚え始めたばかりの次女夫婦はかなり落ち込んでおり、葬儀ではせっかくいただいた仕事なので事業所をさらに発展させていきたいと意気込みを語っていました。しかし経営者の遺産を整理しようと思った時、あることが発覚しました。実は事業所の台所事情は経営者しか知らず、何と周囲が全く知らない借金がいくつも見つかったのです。また事業所の建物自体を担保にして借金をしていることもわかりました。経営者自身かなり節約しているような感じだったので、皆まさか逆に借金があったとは思いもしなかったでしょう。そしてその額は残されたお金以上のものがあったということで、次女夫婦は相続を放棄して事業継続を断念して事業所を閉鎖させました。幸い次女自身が自営業をしていてそちらには影響がなかったということから今では夫婦で別の自営業をしているとのことですが、仕事を辞めてまで継ごうとした婿さんがとても気の毒に思いました。